連載企画:学科教員によるワンポイントレッスン(5)  「嘘(ウソ)」について

ワンポイントレッスンの第5回目は、「嘘(ウソ)」についてです。

介護福祉学科では、「コミュニケーション技術」という授業があります。介護や、精神的な支援に必要なコミュニケーションの技術を学びます。
介護や医療におけるコミュニケーションでは、治療上必要な「嘘(ウソ)」についての研究もなされていて、この授業ではそのような内容も扱っています。
「嘘をつく」ということは、倫理的に許されないといわれる一方で、日々の生活の中で「嘘」は、複雑ですが重要な役割を果たしています。たとえば、命にかかわるような危険な行動は嘘をついてでも止めようとする、というように、相手を思いやっているからこそ、使われる嘘もあるでしょう。
他にも、「嘘」には様々な種類があり、たとえば下の表のように、「相手に話を合わせるための嘘」や、「真実を伝えないといった嘘」、「些細な、罪のない嘘」などがあります。
もちろん介護や医療場面で、無条件にこれらの「嘘」が認められるわけではありません。どのような状況のときに、どのような「嘘」であれば、使用が許されるのか、許されないのか、これまでに様々な国で行われてきた調査をもとに、授業中に受講生同士で話し合ってもらうということもしています。
続きは、ぜひ授業を聴きにきてください。

 

表   Blum(1994)による嘘の分類(一部抜粋のうえ加筆)
嘘の種類 内容 実際の例
話を合わせる 認知症の人が、現実と違うことや、幻覚に影響された内容のことを言ってきても、それを否定せず、話を合わせる 認知症の人が、既に亡くなった人に会いに行くといった時に、その人は今出かけていて不在だと伝えて納得してもらう
真実を伝えない 直前まで真実を伝えないでおく 受診を拒否する認知症の人に、具体的にどこに行くかは伝えずに、ドライブと言って病院まで連れていき受診してもらう
些細な罪のない嘘をつく 真実ではない(が、時に正しいこともありうるような)ことを伝える 認知症の人が朝起きない時に、「息子さんが来るかもしれないから、起きて着替えておきましょう」と言って起きてもらう
認知症;脳の病気が原因で、もの忘れがひどくなったり、今まで簡単にできていたことができなくなる症状や状態

Blum N.S. (1994) Deceptive Practices in Managing a Family Member with Alzheimer’s Disease. Symbolic Interaction, 17(1), 21-36.